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育児と介護 同時期に 「ダブルケア」知ってる?

(日経新聞 2015年8月19日)
 
 育児と介護。一つ一つでも大変なのに、これらが同時にのしかかる「ダブルケア」状態に陥る人が増えている。晩婚・晩産化で子育て期が遅くなり、親の介護時期と重なってしまうためだ。今後、超高齢社会を迎える日本。ダブルケア問題への対応が急務となっている。
 「あんな生活をよく続けていた」。パソナに勤める沢藤真紀子さん(40)は振り返る。それは長女が生まれた2010年に始まった。パーキンソン病を52歳で発症した母(64)を働きながら介護していた。そこに育児が加わった。
 午後5時半に仕事を終えて保育園に娘を迎えにいく。その足で一人暮らしの母を訪ねて、夕食を食べさせて帰宅。娘を入浴させて寝かしつけると午後10時。でも一日はまだ終わらない。
 「トイレが我慢できない。来てくれる?」。身体の自由が利かず、母は一人ではトイレに行けない。ほぼ毎日SOSコールがあり、深夜でも駆けつけた。実家は自転車で5分の距離。介助を終えた後も母が寂しそうにしていると付き添った。夜明けに帰宅し、洗濯と食事の準備を済ませると、もう出勤の時間だ。
 睡眠は1日4時間。「もうダメかも……」。何度もそう考えた。育児と介護と仕事。辞めるなら仕事だが、退職すれば育児と介護に追われるだけ。むしろ行き詰まる、と踏みとどまった。弟夫婦が12年秋に自宅を新築し、母を引き取るまでこんな生活が続いた。今も土、日曜は弟夫婦を休ませるために母の介護に通う。「当時に比べれば楽。孫の成長が生きがいのようで、最近は母の表情も明るい」
 
 横浜国立大学の相馬直子准教授らは介護と育児が同時に進行する状況を「ダブルケア」と命名。12~14年に5府県で6歳未満の子どもを持つ母親ら約1900人に実態を調査した。介護にも携わっているとする回答が約1割に上り、過去に経験した人も約1割いた。相馬准教授は「このほか『今後可能性がある』と答えた人を含めると、約4割がダブルケアの当事者。すでに身近な問題になっている」と説明する。
 背景にあるのは晩婚に伴う晩産化だ。40歳以上で出産した女性は14年に5万人を超えた。1985年は9千人に満たなかった。出産全体に占める割合は85年の0.6%から14年には5%に急増している。それだけ育児と親の介護に同時に直面する可能性は高まっている。
 
 日本ユニシスに勤務する中垣由佳さん(43)は長男誕生に合わせて、09年に実家近くに引っ越した。夫(50)も多忙で夫婦だけでは仕事と子育ては両立できず、両親に頼るためだった。保育園への送りは夫婦で分担したが、迎えは母。「そのまま実家に連れて帰ってもらい、残業で遅くなると子どもは夕食や入浴も実家で済ませていた」
 そんな生活も、頼りにしていた母が昨年病気で入院して一変した。夫婦の役割を見直し、保育園への迎えは夫に任せた。救いは勤務先の介護支援制度が充実していたこと。介護休暇や在宅勤務、フレックスタイムなどを駆使して母の看護に通った。
 幸い手術が成功し、大事に至らなかった。ただ両親はともに70代。頼る存在から支えてあげる立場に変わったと痛感した。実父母以上の心配は愛知県で一人暮らしの78歳の義母だ。夫には姉がいるが、米国在住で頼れない。「毎日通える距離でもない。万一の場合、どうするかを夫婦で話し合っている」
 
 ダブルケアは企業にとっても悩ましい課題だ。「問題が深刻になるのはこれから。今のうちに解決策を見つけなくてはいけない」。東京商工会議所は7月末にダブルケア時代の経営を考える交流会を開いた。中小企業経営者ら約30人が参加した。「労働力人口が減っている状況で、ダブルケアによる離職が増えるのは中小企業にとって重大なリスクになる。どうすれば仕事と育児・介護を両立できるのか知恵を出し合いたい」(同商議所産業政策第二部)
 行政の対応も万全ではない。子育て支援と介護は担当部署が異なる。当事者はそれぞれ別個に利用を申し込んだり相談したりしているので、ダブルケアの苦境に行政の目が届きづらい。政府はようやく問題に着目、今年度中に初の実態調査を実施する。
 横浜国大の相馬准教授は「行政や企業が支援策を整えることも大切だ。ただ、現状ではダブルケアに直面して悩んでいる人の多くは女性。『育児も介護も女性の役割』といった意識から変えていかなくては、高齢社会を支えきれない」と強調する。
 
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