福岡での就業規則からマナー研修、経営計画までサポート。KS人事研究所

福岡の人事制度・評価制度・人材育成・人材活用のことならおまかせ下さい。 株式会社KS人事研究所

労働時間、規制緩和へ議論 勤務管理、重要性増す

(日経新聞 2013年10月28日)
 
 政府内で労働時間ルールを見直す議論が始まっている。働く時間の配分や仕事の進め方を社員に任せる「裁量労働制」や、一定の範囲内で就業時間を社員が決める「フレックスタイム制」を柔軟に運用できるようにする基準の緩和が柱だ。企業の生産性向上を目指すものだが、社員の勤務管理を怠ると法務リスクが高まるといった指摘も出ている。
 「日曜の夕食を家族と一緒にとれるようになったのはありがたいですね」。アサヒビールの管理部門で働く40代の男性社員。週末は単身赴任先から自宅に戻り、ゆっくり過ごしている。月曜はフレックスタイムで遅く出社できるからだ。
 同社は、在社を義務付けたコアタイムがある「フレックスタイム制度」に加え、コアタイムがない制度も導入している。現在、約1500人の社員が対象で、営業職や技術者の利用が多いという。
 東京海上日動火災保険は全ての職場で、朝7時から10時までの30分単位で出社時間を選べる「勤務時間自由選択(マイセレクト)制度」を導入している。主に女性社員向けに、妊娠中から子どもが小学3年生まで使える「短時間勤務制度」も整備。12年度は500人以上が利用した。
 
●「手続きが厳格」
 政府は柔軟な労働時間制度をさらに普及させようと取り組んでいる。だが、企業の間からは、制度上の課題を指摘する声も目立つ。
 例えば、建築設計技術者の場合だ。専門性が高く、出来上がったもので評価されるので裁量労働制の対象業種となっている。ところが、ある建設大手では「労使の議論では手続きが厳格なためなどの理由で見送られた」(人事担当者)という。「ホワイトカラー」ではなおさら困難だろう。
 経団連は、企画立案などの業務で社員に仕事の進め方を大幅に委ねる「企画業務型裁量労働制」について、対象業務の拡大や導入手続きの簡素化を求めている。現在、企画業務型の対象となる労働者は全体の0.3%にすぎない。事業運営に関わる企画、立案、調査、分析に限られているのが一因だ。これを労使が実務に合わせて業務内容を決められるよう要望している。
 また、高い専門知識を使って創造性の高い仕事に携わる労働者については、健康管理に配慮したうえで、労働時間規制の適用除外(エグゼンプション)を求めている。要望の背景にあるのは、現在のルールが「仕事と生活の調和を難しくしているだけでなく、業務の実態に合わず、競争力をそいでいる」と考えているからだ。
 規制改革会議などは、こうした労働時間法制の見直しの必要性を指摘。厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会の労働条件分科会で9月から議論を始めた。1年程度で結論を出す予定だ。
 主に労働基準法で規定している労働時間のルールは、工場で集団的に仕事をする従属した労働者をモデルにしており、多様で複雑な今の職場実態に合わないところが増えているといわれる。既存の規制が機能していない部分の見直しは必要だろう。
 一方で、裁量労働制の緩和を警戒する声もある。日本弁護士連合会は「労働の量や期限は会社が決めるので、命じられた仕事が過大であれば、事実上長時間労働が強いられ、時間に見合った賃金を得られない事態が生じかねない」と懸念。「適用労働者が少ないことを見直し理由とするのは乱暴な議論だ」と批判する。
 会社にとってもリスクはある。裁量労働制を適用する場合でも、企業は労働時間を管理する責任が残る。今津幸子弁護士は「会社が社員の労働時間管理を怠り、過労で健康を害すれば、安全配慮義務違反になりうる」と指摘。病気になった社員などから賠償を請求される可能性もあるため「社員の働きぶりを十分に把握し、対処する必要がある」と強調する。
 
●時短促す制度を
 では、どういう労働時間改革を目指すべきか。東京大学の水町勇一郎教授は、仕事の実態に見合った働き方を進めると同時に、社員の健康確保や企業のインセンティブも取り入れた制度を整える必要があると強調する。「労働時間の絶対的上限や休息時間の保障など必ず守らなければならないルールの整備と、労働時間短縮に応じた社会保険料の引き下げといった対応が考えられる」と話す。
 労働時間のルールは、もともと労働者の健康確保を目的としており、その基本はしっかり守るべきだ。ただ、規制自体は働き方の実態に合わせて工夫する余地がある。国際競争を生き抜くために、企業は生産性向上と社員の健康や生活をどう両立させていくのか。議論を深めなければならないだろう。
 
copyright(C) 2010 川庄公認会計士事務所 All Rights Reserved.